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何か面白いことないかな

大分県中津市で見つけた歴史資料28『舎密開宗 (せいみかいそう)』(1837)

今回は江戸時代末期に、日本で最初の体系的な化学入門書『舎密開宗』を紹介しようと思います。



目次

大分県中津市ってどこ?

福岡県と大分県の県境です。
江戸時代末期には蘭学の街として栄え、歴史の教科書に掲載される『解体新書(初版本)』が展示されている町です。
今は「中津からあげ」と鱧が有名な街です。

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(画像引用元:中津市へのアクセス | 大分県中津市



『解体新書(1774年)』の翻訳者、前野良沢の所属が豊前国中津藩(現在の大分県中津市)なので、そのゆかりで『解体新書(初版本)』が中津市に展示されています。


大分空港から車で1時間半ほどの場所です。

舎密開宗 (せいみかいそう)』について

舎密開宗 』(1837)って何?

国内初の体系化学入門書です。
イギリス人科学者ウィリアム・ヘンリー著のドイツ語訳をさらにオランダ語訳されたテキストをもとに書かれました大著です。
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「舎密」とはラテン語系のオランダ語「セーミ(Chemie)」に当て字をしたもので、セーミとは英語でいうケミストリー、つまり化学のことです。「開宗(かいそう)」はもののおおもとを啓発するの意味です。


有名なの古文書なので、武田薬品工業株式会社や早稲田大学等も所蔵しています。

作者:宇田川榕菴(うだがわ ようあん)って誰?

宇田川 榕菴(1798年 - 1846年)は江戸時代後期の津山藩岡山県津山市)の藩医蘭学者です。

日本で初めて温泉の泉質調査した人です。あとコーヒーの当て字に「珈琲」という字を考えました。



舎密開宗』の何がすごいの?

舎密開宗』は日本で初めての近代化学を紹介する書だったので、当時の日本に概念のなかった「酸素」「窒素」「炭素」「水素」といった元素の名前や「酸化」「還元」「溶解」「飽和」「結晶」「分析」など多数の化学用語を考え出しました。

舎密開宗』の内容

舎密開宗』の 中身

全七篇二十一巻、内編十八巻六冊・外編三巻一冊より編成されています。片仮名交りの本文、彩色刷の挿画多数入りです。
初篇から六篇に内篇十八巻を、七篇に外三巻を収録されています。
それぞれの性質や製法、実験法などが図版を付して説明されています。

目次

内編(18巻)
序文
1巻:化学親和力、溶解、温素
2巻:酸素、窒素、水素、水
3巻:アルカリ、酸、炭素
4巻:炭酸、硫黄
5巻:硫酸、硝酸
6巻:塩酸
7巻:燐酸、石灰
8巻:弗酸、苦土、礬土、珪土
9巻:重土、アルカリ金属
10巻:金、白金
11巻:銀、水銀
12巻:鉄
13巻:銅、鉛、錫
14巻:亜鉛、砒素、マンガン
15巻:コバルト、新金属
16巻:糖、クエン酸
17巻:安息香酸
18巻:澱粉、蝋


外編(3巻)
1巻:分析化学
2巻:試薬
3巻:鉱泉分析例

引用元:舎密開宗 - Wikipedia

水素ガス実験図が載せられていたり....
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5a/SeimiKaisouChemistry.jpg


ボルタ電池解説図が載せられています。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e9/Seimikaisou.jpg



舎密開宗の原著は幾つか翻訳され増補されてものを、さらに宇田が翻訳し増補しています。
イギリスの化学者ウィリアム・ヘンリーが1799年に出版した 『Elements of Experimental Chemistry』 を...
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(画像引用元:The elements of experimental chemistry : Henry, William, 1774-1836 : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
  ↓
J・B・トロムスドルフ(de:Johann Bartholomäus Trommsdorff)がドイツ語に翻訳、増補した 『Chemie für Dilettanten』 を...
f:id:Perie:20180807162530p:plain:w200
(画像引用元:Chemie für Dilettanten - William Henry - Google Books)
  ↓
さらにオランダの Adolf IJpeij がオランダ語に翻訳、増補した 『Leidraad der Chemie voor Beginnennde Liefhebbers, 1803(『依氏舎密』)』に、
  ↓

Adolf Ijpeij による Sijstematisch handboek der beschouwende en werkdaadig Scheikunde(『依氏広義』)、スモーレンブルグ(F. van Catz. Smallenburg)のLeerboek der Scheikunde(『蘇氏舎密』)など、他の多くのオランダ語の化学書から新しい知見の増補や、宇田川榕菴自身が実際に実験した結果からの考察などが追記されているそうです。


ややこしいですね。
要はいろいろな化学書を考察して書かれたようです。

舎密開宗』のネット上での閲覧方法

国立国会図書館早稲田大学図書館のデジタルアーカイブ等から閲覧することができます。

舎密開宗. 内篇 / 賢理 [原著] ; 宇田川榕菴 重訳増註

余談:宇田川榕菴とコーヒー

新しい物好きの榕菴は、代々津山藩医を勤める蘭学の名門・宇田川家と交流のあったオランダ商館長と面談した際に、初めて飲んだコーヒーに興味を持ちます。そして現在、一般的に使われている「珈琲」という字を考えました。

「珈琲」という字は、オランダ語の"koffie"という発音に合わせただけでなく、「珈」は女性の髪を飾る玉飾り、「琲」は玉飾りの紐の意味で、コーヒーの木に真っ赤なコーヒーチェリーが実っている様子を描写したと伝わっているそうです。*1





この由来からか毎年、宇田川榕菴の命日にはコーヒーがお供えされるそうです。*2






当時使われていたコーヒーポット等を知りたい方は、以下のリンクよりお進みください。
岡山県の津山のカフェ「城西浪漫館の津山榕菴珈琲」に写真が載せられています。
tsuyama255.net



余談ですが、宇田川榕菴の里の津山(岡山県)には「和蘭陀堂(おらんだどう)」と呼ばれるカフェがあるようです。
https://tblg.k-img.com/restaurant/images/Rvw/19391/640x640_rect_19391066.jpg
(写真引用元:https://tabelog.com/en/okayama/A3304/A330401/33010498/


コーヒーとオランダ名物ワッフルが提供されているようです。
https://tblg.k-img.com/restaurant/images/Rvw/19391/640x640_rect_19391044.jpg
(写真引用元:https://tabelog.com/en/okayama/A3304/A330401/33010498/



中津にもこんな感じのカフェできたらいいのに。


舎密開宗』の展示場所

大分県中津市の大江医家資料館で見ることができます。

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村上医家資料館・大江医家資料館 共通パンフレット


まとめ

大分県中津市の大江医家資料館には、江戸時代末期に日本で初めての近代化学を紹介する書『舎密開宗』が展示されています。当時の日本に概念のなかった「酸素」や「水素」など多数の化学用語が載せられています。

興味のある方は、別府温泉、 湯布院温泉に行くついでに、ぜひ中津市にもお立ち寄りください。




大分県中津市に仮住まいしていました。蘭学関係の古文書が数多く置かれているので「中身はどのようなものか」と気になり、興味本位で調べています。関係者ではありません。

近いうちに中津に展示される古文書の紹介を終え、次の趣味を始めようと思います。