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何か面白いことないかな

大分県中津市で見つけた歴史資料23 田原淳関連の資料(1906)

昨年まで、大分県中津市に仮住まいしていました。蘭学関係の古文書が数多く置かれているので「中身はどのようなものか」と気になり、興味本位で調べています。



今回は心臓学の父・田原淳のスケッチを紹介しようと思います。

目次

大分県中津市ってどこ?

福岡県と大分県の県境です。蘭学の街として栄え、歴史の教科書に掲載される『解体新書(初版本)』が展示されている町です。
今は「中津からあげ」と鱧が有名です。

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(画像引用元:中津市へのアクセス | 大分県中津市


『解体新書』の翻訳者、前野良沢の所属が豊前国中津藩(現在の大分県中津市)なので、そのゆかりで『解体新書』が中津市に展示されています。




田原淳関連の資料(1906)

中津市の大江医家資料館に展示されている田原淳(たわらすなお)の資料です。

『哺乳動物の心臓における刺激伝導系統』挿図のスケッチ(1906)

田原がドイツ留学時代に描いた心臓のスケッチです。

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田原淳資料

『哺乳動物の心臓における刺激伝導系統』の校正刷り(1906)

題名”Das Reitzleitungssystem des Saugetierherzens”
田原がドイツ留学時代に書き上げた論文です。
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これだけ見ても分かる人は少ないと思います。私も初めて見たとき、サッパリ分かりませんでした....

詳細は以下に説明していきます。

田原淳(たわらすなお)について

田原淳って誰?

田原 淳(1873 - 1952)は明治期から昭和期の心臓病理学の権威。大分県安岐町に生まれ、中津市の田原家に養子になりました。

別府市に開設された福岡医科大学(現九州大学医学部)付属の温泉医療学研究所の初代所長です。*1

中津市内の看板
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(写真引用元:個別「20130805160512」の写真、画像 - masatahara's fotolife

何がすごいの?

田原淳のおかげで、心臓病の診断に心電図が使われるようになりました。

田原が研究していた当時、心電図は使い道のない道具だったらしく、心電図が描き出す曲線を見て、心臓のどこが悪いのか診断できなかったようです。

心電図が描き出す曲線の意味を、当時の学問的水準はそこまで達してはいなかったようです。

アイントホーフェンの心電図
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(図引用元:医療の挑戦者たち(24)心電図の医学が始まる。時代はその日本人研究者を待っていた。(田原淳)

田原淳は何をしたの?

田原淳は心臓内を伝わる、電気の道筋を見つけました。これを「刺激伝導系」と呼びます。
そのことで、心電図の波形と心臓のどこの部分が対応しているかが分かるようになったようです。


現在わかっている心臓の説明になりますが、心臓は電気の流れによって心筋が収縮と弛緩を繰り返し、血液の循環が行われます。

電気の流れる順番ですが......洞房結節→房室結節(A-V node,田原結節)→ヒス束→左脚・右脚→プルキンエ線維....の順番に電気信号が流れます。


このうち田原は、房室結節(A-V node,田原結節)→ヒス束→プルキンエ線維に続く心臓の刺激伝導系を見つけ出しました。そして「房室結節(A-V node,田原結節)」の存在を発見しました。


※洞房結節は 1907 年A・キース、M・フラックによって発見され、現在は、田原の発見した刺激伝導系と洞房結節を合わせて刺激伝導系と呼ばれています。

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(図:医療の挑戦者たち(24)心電図の医学が始まる。時代はその日本人研究者を待っていた。(田原淳)を改変)


こうして田原淳の研究により、その後、心電図のどこかに異常があれば、心臓のどの部分に異常があるか判断できることになったようです。

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(画像引用元:不整脈の読み方|不整脈の心電図(1)|看護roo![カンゴルー]

田原の研究は心電図による心臓病の診断の他、直視下心臓内手術での完全房室ブロックの防止心臓ペースメーカーの普及等にも繋がっています。


※直視下心臓内手術.....心臓外科手術で患者の心臓を切開し手術操作を行う方法

※完全房室ブロックの防止.....正常な心臓では刺激伝導系によって規則正しく心臓が収縮しますが、刺激伝導系に異常があると、心臓の収縮が不規則になる「房室ブロック」という状態になります。
房室ブロックは1度から3度まであり、最も重症な3度の房室ブロックは「完全房室ブロック」と呼ばれ、突然刺激が心室まで伝わらなくなり、心臓が収縮しなくなります。3度の場合は意識を消失(失神)します。完全房室ブロックは命に関わるため、ペースメーカーの適応となり早急に植え込み手術が行われます。


※ペースメーカー......ペースメーカーは、電気刺激を心臓に伝えることにより心臓の調律を図り、脈拍数を正常に維持し規則正しく心臓を収縮させるための重要な機械です。*2

『マンガ』ペースメーカーの父 田原淳

中津市が漫画をWEB公開していますので、一部を紹介いたします。


『マンガ』ペースメーカーの父 田原淳
『マンガ』ペースメーカーの父 田原淳 | 大分県中津市

ドイツ留学先で田原淳が行っていた研究の様子

心臓の筋肉を何千枚もの薄片にし、顕微鏡や肉眼で丹念に観察するという作業を繰り返し行いました。このとき多数の薄片スケッチを残しています。*3

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(画像引用元:『マンガ』ペースメーカーの父 田原淳 | 大分県中津市

研究職にはありがちなのですが、地道な作業ですね。

論文『哺乳動物心臓の刺激伝導系』の執筆に至るまで

それまでヒト、イヌ、ネコ、ウシの心臓を使って調べていても分からなかったことが、ヒツジの心臓を使って調べたところ、遂に心房と心室とをつなぐ特殊な心筋線維が存在することを発見し、この心筋線維こそが心臓拍動の「刺激伝導系」であることを明らかにしました。

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(画像引用元:『マンガ』ペースメーカーの父 田原淳 | 大分県中津市

この漫画の最後の方に出てきた論文が、冒頭で紹介した展示物になります。




展示場所

大江医家資料館に展示しています。
特別展の開催時は、展示されていない可能性があります。

まとめ

大分県中津市には心臓学の父・田原淳に関連する資料が展示されています。田原のお陰で心臓の診断に心電図が使われたり、治療にペースメーカーが使われたりしています。
お時間のある方は、別府温泉、 湯布院温泉に行くついでに、ぜひ中津市にもお立ち寄りください。

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私ごとですが、知人が九州を舞台とした日本神話の小説の本を出版しました。中津市やその隣町の日田市、宇佐市も出てるので興味のある方に広めていただければ幸いです。

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