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何か面白いことないかな

大分県中津市で見つけた歴史資料18 華岡青洲関連資料

大分県中津市に仮住まいしていました。蘭学関係の古文書が数多く置かれているので「中身はどのようなものか」と気になり、興味本位で調べています。

今回は華岡青洲に関連した資料を紹介いたします。

大分県中津市ってどこ?

福岡県と大分県の県境です。蘭学の街として栄え、歴史の教科書に掲載される『解体新書』をみることができる町です。
今は「中津からあげ」が有名です。
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華岡青洲(1760 - 1835)とは?

和歌山県出身のお医者さんで、世界初の全身麻酔による手術(乳癌手術)を成功した人です。
とても有名な方で、マンダラゲ(別名:チョウセンアサガオ)を使用した、麻酔開発のエピソードが度々ドラマ化されています。

華岡青洲の詳細エピソードは、以前ご紹介した記事をご覧ください。
perie.hatenablog.com




華岡青洲ゆかりの資料

大江医科資料館に展示されているのですが、大江雲澤(1822 - 1899)が華岡医塾大坂分塾(合水堂)で華岡流の外科学を学んでいたこともあり、様々な華岡青洲に関連する資料が展示されています。
当時、中津藩から華岡医塾大坂分塾に5名の医師が派遣されて学んでいたそうで、*1中津藩は勉強熱心な藩だったことを伺い知ることができます。


華岡青洲画像

華岡青洲(1760〜1835)が描かれた掛け軸です。中津の医師、大江雲澤が大阪で華岡青洲の娘婿に医学を習いに行った際、免許皆伝代わりに、この華岡青洲画像を譲り受けたそうです。
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舌診要訣・青嚢秘録(せいのうひろく)

青嚢秘録は薬学書のようです。は青洲が用いた処方が解りやすく簡明に書かれ
ているのだとか。*2

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舌診要訣・青嚢秘録(写本)

麻沸湯(別名:通仙散)の処方

青嚢秘録には華岡青洲が開発した麻酔薬「麻沸湯(別名:通仙散)」が書いてあります。
最終処方のトリカブト(=鳥頭)・マンダラゲ・当帰(=當皈)・白芷・川芎・天南星の6種類が記載されています。

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(画像引用元:青嚢秘録 / 花陵青州 著


一応、処方を載せておきます。

麻沸湯(まふつとう)
処方:曼荼羅実(マンダラジツ) 6銭、百芷(ビャクシ) 1銭、南星(ナンショウ) 1銭、当帰(トウキ) 3銭、川芎(センキュウ) 6銭、烏頭(ウズ) 1銭、
製法:以上の6種を粉にして、煎じて服用する。


華岡麻沸湯(まふつとう)
処方:曼荼羅実 6銭、川芎 3銭、百芷 1銭、当帰(焙ったもの) 3銭、烏頭 3銭、南星(焙ったもの) 1銭
製法用法:以上の6種を粉末にし、小児には1銭5分、大人には2銭。それを1合4,5勺の水で、その80%くらいになるまで煎じる。
または、散剤(この場合は、麻沸散マフツサンになる)にして服用させても良い。

引用元:華岡青洲の書物に見る紫根 紫雲膏の原典 : 昭和薬局ブログ

※マンダラゲもトリカブトも天南星も毒性があって危険ですので、作らないでください。

「狐ツキヲ落ス方 口傳」

こちらは村上医科資料館に展示されている『青嚢秘録(写本)』です。
こちらも華岡青洲著のものだと思われるのですが、見開き右端に書かれている文章は「狐ツキヲ落ス方 口傳」でしょうか?謎が深まるばかりです。。

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青嚢秘録(写本)

『青嚢秘録』の閲覧方法

『青嚢秘録』の内容は、以下のリンクから眺めることができます。

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(画像引用元:青嚢秘録 / 花陵青州 著

華岡青洲所診画帳

世界初の全身麻酔による手術(乳癌手術)を成功させた華岡青洲の乳癌手術図の写本です。
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この当時コピー機が存在しないので、手描きで写しています。
華岡青洲の元で学んだお弟子さんによる写本が、日本各地で所蔵されている印象があります。
もちろん華岡青洲の里、和歌山県でも所蔵されています。

青洲の乳がん手術図(和歌山県 青洲の里所蔵)
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(引用元:華岡青洲の乳がん手術|和歌山県立医科大学附属病院紀北分院

截断篇(さいだんへん)

「『截断篇』紀陽 華岡青洲先生口授」とあります。
現代の漢字に当てはめると「切断編」でしょうか。

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『截断篇』紀陽 華岡青洲先生口授



瘍科瑣言(ようかさげん)

「瘍科」とは腫れ物などを治療する部門のことで、「瑣言」とはちょっとした言葉、とるに足りない言葉という意味だそうです。
『瘍科瑣言』とは華岡青洲がみずからの瘍科の治療法を門人たちに口述した言葉のようです。青洲の教育は実習と口述とが基本だったようで、門人たちは青洲の言葉を書きとめ、それを写していたようです。*3

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瘍科瑣言(写本)

『瘍科瑣言』の内容は、以下のリンクから眺めることができます。

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(画像引用元瘍科瑣言 / 華岡青洲 口授

その他資料

華岡家と大江家が交流あったようで、手紙が展示されています。他にも資料が展示されていたような気がしますが....写真を撮影した当時、あまり興味がなかったので写真を撮ませんでした。すみません。





現代でも使われている華岡青洲の処方薬

現代でも華岡青洲が開発した薬が売られています。華岡青洲は現在の皮膚科領域の治療も得意としていたようで、皮膚トラブル関連の薬が売られています。amazonで購入できましたので、幾つかご紹介いたします。

紫雲膏(しうんこう)

華岡青洲著『外科正宗』に収載されている漢方の軟膏です。
華岡青洲が「潤肌膏」という軟膏を元に、豚脂を加えて改良を加え完成されたといわれる歴史のある名処方です。現在も盛んに使われているそうです。

ひび、あかぎれ、しもやけ、外傷、火傷(やけど)等に効果を発揮します。成分はごま油、蜜蝋、豚脂、トウキ(=当帰)、シコン(=紫根)です。

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紫雲膏

特徴
●「紫雲膏」は、江戸末期の名医華岡青洲の創方で漢方の軟膏として「外科正宗」に収載されています。
●ひび、あかぎれ、しもやけ、外傷、火傷(やけど)などに効果を発揮します。
特に肉芽形成を促進しますので、患部の治癒を早め、皮膚をなめらかにします。また低刺激性の軟膏として広く用いられています。
引用:漢方製剤 クラシエ紫雲膏 説明文書より

2010年にテレビ番組「魔女たちの22時」で、シコン(紫根)の化粧水や、紫雲膏が紹介されたこともあり、関連製品が品切れになったとか。。

シコンの色の通り、赤紫色です。臭いは...ごま油の臭いでしょうか...。強く臭うわけではありませんが、いい香りではありません。
口に入れても大丈夫な素材ですので、リップクリームとしても使えそうな印象があります。服についたら、紫色になりますのでご注意ください。

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クラシエ紫雲膏



十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

十味敗毒湯は古典書『万病回春』に記載されている「荊防敗毒散」をもとに、江戸時代の華岡青洲によりつくられた処方です。その名の通り、10種類の生薬を用いて毒素を敗退させることを目標に考え出されたそうです。皮膚の赤みやカユミを発散し、腫れや化膿をおさえます。また、そのようになりやすい体質を改善します。体力が中くらいの人に向く処方だそうです*4。出典は『瘍科方筌』(ようかほうせん)です。

効能は以下の通りです。

「十味敗毒湯」は、『華岡青洲』という江戸時代の医師が考案した漢方薬で、発赤、腫脹、疼痛、熱感があったり、あるいは化膿しはじめの「化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期」、「じんましん」、「湿疹・皮膚炎」、「水虫」に用いられています。

引用:ツムラの漢方製剤 ツムラ漢方十味敗毒湯エキス顆粒 説明文書より

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十味敗毒湯



漢方独特の臭いがします。味は...苦くはありません。比較的飲みやすい方だと思います。

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ツムラ漢方十味敗毒湯エキス顆粒


中黄膏(ちゅうおうこう)

華岡青洲が「黄連膏」という軟膏を改良して作ったといわれている、江戸時代から伝わる処方です。中黄膏は華岡青洲著『春林軒膏方』に収載される外用の漢方製剤です。
はれものの初期、うち身、ねんざに対し、熱を取り、排膿を促し、疼痛をやわらげ、うっ血を散らす効果があります。



商品注文が間に合わず、写真が掲載できませんでした....。
鮮やかな黄色が特徴的な軟膏のようです。




華岡青洲関連の関連として紹介してしまいましたが、使われる方は使用前に医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください。


展示場所

大江医科資料館に展示されています。

大江医家蔵書一覧

まとめ

大分県中津市の大江医科資料館には、世界初の麻酔による乳癌手術を成功させた華岡青洲関連の様々な資料が展示されています。
現代でも使用されている華岡青洲処方の漢方製剤もありますので、近所の薬屋さんで探してみると江戸時代の薬を身近に感じられるかもしれません。

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*1:水滴は岩をも穿つ 川嶌眞人 p70

*2:さざなみ:滋賀医科大学附属図書館報 No.29(1987.9) 

*3:ぱなにあえば2: 華岡青洲の瘍科瑣言 「解説」 2015.10.25

*4:十味敗毒湯