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何か面白いことないかな

大分県中津市で見つけた歴史資料⑦『西医略論』(1858)

大分県中津市に仮暮らしていました。この頃、個人的に中津市で見つけた古文書を調べています。
今週末(7/22〜7/23)は中津市のお隣、日田市でユネスコ無形文化遺産日田祇園が行われます。豪雨災害により開催が一時危ぶまれましたが、今年も多くの観光客に訪れてもらいたいとのことで開催することになったそうです。
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それでは本日から3回、続けて英国人医師ベンジャミン・ホブソンの書物を紹介していこうと思います。今回は『西医略論』の紹介です。



目次

大分県中津市ってどこ?

福岡県と大分県の県境です。かつて蘭学の里として栄えたからか、現在では『解体新書』(初版本)が展示されています。
その他は、中津唐揚げと鱧が名物の場所です。中津駅には鱧が入った水槽が置かれています。

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『西医略論』って何?

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(村上医科資料館所蔵『西医略論 開かれているページは『西医略論』4冊目 下巻)

外科的治療法とその薬の処方を網羅した書物です*1。全四冊、上中下巻から成り立ちます。筆者は『婦嬰親説』の作者と同様、上海で医師活動をしていた英国人医師のベンジャミン・ホブソンです。


perie.hatenablog.com

1850年代、上海は東アジアの貿易や交通ネットワークの中心だったそうです。ロンドン教会の宣教師たちは西洋情報を伝達するために、「墨海書館(ぼっかいしょかん)」の印刷所と「仁済医館」の診療所を設置しました。「仁済医館」の管理を任せられたホブソンです*2



話は少々逸れますが、先に紹介した「墨海書館」は1843年(道光23年)清代の上海で設立され、上海で最も早くに成立した近代出版社だったそうです。電力が無かった当時、最新機器の牛を動力とする印刷機を備えていました。

墨海書館牛車
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(画像引用元:場所|城市漫遊指南:上海“印”跡 - 歌穀穀

牛を使うとは、すごい時代ですね....。

『西医略論』の中はどんな感じ?

4冊ありますが、それぞれ上中下に分かれています。

・上巻:東西医学及び病症の総論
医学総論、中西医学論、審証論、薬物論、食物論、致病有由論、炎症論、膿瘡論、潰瘡論、死肉証論、湯火傷論、外傷論、脈管跳血癅論、癰疽論、熱証論、瘧論

・中巻(上・下) 各部位の病症
骨証論、交節証、切断骨総論、諸骨折断論、脱骨論、頭脳傷論、脳部災 証論、背髄病論、眼証論、耳鼻口下等、胸部外傷、肚腹外傷、乳証、小腸疝証、肛門証、溺器証、腎嚢証、救急証治、戒鴉片煙癮論

・下巻:処方箋の記述
膏薬門、丸薬門、薬散門、薬水門、薬酒門、薬油門



中国医学との関連を重視し、その謝りを正しつつ近代医学の紹介につとめているようです*3。幅広い内容を取り扱った書物ですので、様々な図が載っています。一部紹介いたします。

包帯の巻き方
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(西醫略論 合信[Hobson, Benjamin]著 ; 淸管茂材撰 42@24@1. - Full View | HathiTrust Digital Library | HathiTrust Digital Library)

頭蓋骨に穴を開ける方法
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https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=keio.10811034585;view=1up;seq=109;size=50



私が最も『西医略論』特徴を表しているページだと感じているページが、こちらのアヘン喫煙を戒める部分です。

中編の下「戒鴉片煙癮論」 アヘン(鴉片)について記載されているページ
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(画像引用:慶應義塾大学所蔵 
西醫略論 合信[Hobson, Benjamin]著 ; 淸管茂材撰 42@24@3. - Full View | HathiTrust Digital Library | HathiTrust Digital Library

)

1840年アヘン戦争が起きるほど、当時の中国ではアヘンが蔓延していました。それから18年後、『西医略論』が出版された1858年もまだアヘン吸っている方が多かったようです。中国最後の皇帝の妻、婉容皇后(1906年 - 1946年)もアヘン中毒でしたものね...。

映画「ラストエンペラー」アヘン中毒に陥った婉容皇后
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(画像:映画「ラストエンペラー」)

様々な図が載せられていますので、気になる方は、後の章「内容の閲覧方法」を参考に閲覧ください。

内容の閲覧方法

以下のサイトから閲覧することができます。
Catalog Record: 西醫略論 3� | Hathi Trust Digital Library

長崎大学附属図書館 近代化黎明期翻訳本全文画像データベース



そして現在、なんとオークションサイトで購入できます。

英国老舗オークション・ハウス「ボナムス」で取り扱われている『西医略論』
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(画像:Bonhams : HOBSON, BENJAMIN. 1816-1876. Seiyi-ryakuron [First lines of the practice of surgery in the west]. Tokyo: Yorozua Hyoshiro, 1858.

西医略論が置かれている場所

村上医科資料館に置かれています。

まとめ

大分県中津市で見つけた『西医略論』は、様々な外科的治療法とその薬の処方を網羅した書物です。とりわけ当時の中国(清国)で多かった、アヘン喫煙を戒める内容が記載されています。現在、『西医略論』は英国老舗オークション・ハウス「ボナムス」で出品されているようです。欲しい方はオークションで落札し、眺めるだけで満足される方は中津市にお越しください。

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ラストエンペラー [DVD]

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*1:幕末明治初期に渡来した自然神学的自然観 一 ホブソン『博物新編 』を中心に 一 八耳俊文 p130

*2:長崎大学附属図書館 近代化黎明期翻訳本全文画像データベース 医学分館所蔵漢訳洋書概要

*3: 中国キリスト教初期医療伝道史研究 - 立正大学学術機関リポジトリ p90