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何か面白いことないかな

大分県中津市で見つけた歴史資料⑥『婦嬰新説』(1859)

大分県中津市に先月末まで仮暮らししていました。
九州豪雨で中津市内は割と大丈夫だったそうですが、山のあたり(耶馬渓)が橋が壊れたり、銅像の腕が流されたり...と被害あったようです。まだ雨が続きそうなので、知人たちが大丈夫か心配です。

大分県中津市でみつけた古書を紹介いたします。


目次

大分県中津市ってどこ?

福岡県と大分県の県境です。蘭学の街として栄えていたので『解体新書(初版本)』を見ることができます。
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冒頭でも述べた耶馬渓(やばけい)ですが、最近、日本遺産に認定されました。走るのに良い場所ですので、雨が落ち着いた頃にドライブ・サイクリングにぜひ訪れてみてください。
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『婦嬰新説』って何?

英国人ベンジャミン・ホブソン(Benjamin Hobson, 1816 - 1873)が、清国の管茂材の協力を得て中国語で著した産科学書です。

村上医科資料館 展示品

大江医科資料館 展示品

以下の写真のように、中国語による西洋医書の訓点翻刻本です。

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(出典:早稲田大学図書館
婦嬰新説. 巻上,下 / 合信, 管茂材 撰

著者ベンジャミン・ホブソン

著者は英国人ベンジャミン・ホブソン(Benjamin Hobson, 1816 - 1873)です。
中国名は「合信」または「霍浦孫」だそうです。ホブソンはロンドン大学医科大学卒業後、1839年から20年間中国で宣教医として医療伝道を行ったそうです。この間、中国に西洋の近代的な医学を伝えるため、「合信五種」とも言われる5種類の医学書を執筆しました。これらの医学書は幕末から明治初期にかけて日本に伝わり、和刻本や和訳本が刊行され、日本医学に影響を与えたそうです。
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『婦嬰新説』の中身はどんな感じ?

上巻は子宮、生理、妊娠、出産等について書かれています。下巻は新生児及び水痘などの病症が載せられています。
産科学の本なので基本的に妊娠出産について書かれていますが、育児法から、小児がかかる病気(麻疹など主に感染症)、小児に使用される処方薬について記載されているます。

目次
巻上
自分で見比べて書いた
総論子宮静珠、総論月経、月経病証、白帯証、論妊娠胚胎、論受胎証拠、弁孖胎法、総論男女之数、論男女不生育之故、論半産、論妊娠症、論分娩之期、論將産証據、論臨産、論臨産時変症、論胎盤不出、論産後子宮斂縮、論産後腹痛血露、論産前後血崩証、論接生之法、論変産接生法、論産後症

巻下
論乳、論別母之乳、論小児宜忌、論嬰児初生、論小児初生時病症、論生牙換牙、麻証論、痘証論、水痘、(附)種痘論、選用方薬



それでは中身を覗いて見ましょう。


こちらの図では女性の骨盤の説明ですが、他の図では子宮、胎児図なども描かれています。

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(出典:早稲田大学図書館
婦嬰新説. 巻上,下 / 合信, 管茂材 撰


こちらの図では、難産そうなケースを紹介しています。顔面から出てきたり、胎児の片腕が出てきたり....大変そうです!!
図を見る限りでは、帝王切開無しによる処置が紹介されているのでしょうか?

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(出典:早稲田大学図書館
婦嬰新説. 巻上,下 / 合信, 管茂材 撰

ドラマ『JIN(完結編)』の野風さんの出産中に胎児が横位になり、胎児の手が出て来てしまったので帝王切開をしていました。
しかも麻酔無しで...いつの時代も出産は命がけです。

ドラマ『JIN(完結編)』の野風出産シーン
「腹を切って子供を取り出してください」と懇願する場面
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ドラマ『JIN(完結編)』第8話

余談ではありますが、国内初の帝王切開は1852年(嘉永5年)4月25日、蘭方医伊古田純道によって行われました*1。場所は埼玉県飯能市坂元(旧名:秩父郡我野正丸)です。産科医をしている甥の岡部均平から難産の手助けを要請され、伊古田が駆けつけてみると胎児はおなかの中ですでに息絶え、母体が危なかったので帝王切開に踏み切ったそうです。伊古田は数か月前にオランダの医学書から学んだ技術をもとに、手術を成功させたそうです。勿論、麻酔はありません。国内2例目の帝王切開は30年程後になります。

流し見した限りでは『婦嬰新説』では帝王切開せず、医師による手技でなんとか胎児を出す方法が紹介されているようです。
19世紀のヨーロッパにおける帝王切開の母親の死亡率は75%にも及んだそうです。出血と手術後の細菌感染が原因だったそうなので、ホブソンはあまりオススメしたくなかったのでしょうか...。

何処に置いてあるの?

村上医科資料館と、大江医科資料館に展示されています。
村上医科資料館での展示品は図のページが、見開きで置かれています。

まとめ

『婦嬰新説』は英国人ベンジャミン・ホブソンによる産科学書です。中国語で編纂された後に、幕末から明治初期に日本に伝わりました。妊娠出産、育児法から、小児がかかる病気など幅広く取り扱われているようです。

*1:伊古田純道『子宮截開術実記』